ハイブリッドカーのメリット・デメリットはよく話題に出ますが、整備士からみたメンテナンスにおけるメリット・デメリットは、あまり聞いたことがありません。ハイブリッドカーの購入を検討するうえでの参考になればと思います。
この記事の目次
≪メリット≫
パッド・シューがなかなか減らない
パッド・シューとは、ブレーキを踏んで減速するときに消耗する部品になります。
パッドとシューの違いは、ブレーキの作りの違いによるもので、パッドはディスクローター、シューはドラムという部品におさえつけて摩擦させることでブレーキをかけることができます。
難しい表現をすれば、車が前に進もうとする運動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換することでブレーキをかけています。
ハイブリッドカーの場合、回生ブレーキによりブレーキがかかります。
回生ブレーキとは、車が進もうとする力でモーターを回して発電しバッテリーへの充電を行います。この充電が減速をするための力となりブレーキがかかります。
難しい表現をすれば、車が前に進もうとする運動エネルギーをバッテリーを充電するための電気エネルギーに変換することでブレーキをかけています。
ハイブリッドカーがパッド・シューを消耗するときは、急ブレーキ等により回生ブレーキでは減速力が足らないときや、ブレーキの操作感覚を優先する低速域になります。
では、実際にどれくらいパッド・シューの減りが遅くなるの?という話ですが、ブレーキの踏み方により消耗するスピードに差があるため参考程度で記載しますが、倍以上長持ちします。20系プリウスの場合、発売から10年以上が経過していますが、パッド・シューを交換した記憶がないくらいです。パッドの交換時期が来る前に車の乗り換えをしているということになります。
ベルトがない(車種によりベルトがついているものもあります)
ハイブリッドカー以外の車には、発電するためのオルタネーター、冷却水を回すためのウォーターポンプ、ハンドルを楽に回せるようにするためのパワーステアリングポンプ、エアコンのコンプレッサなどがベルトにより駆動されています。
ハイブリッドカーの場合、すべての補機類を電気による駆動、発電はオルタネーターではなくモーターでおこなうことでベルトが不要になっています。
ベルトがないということは、ベルトの交換費用がかかならいためメリットとなります。
セルモーター(スターターモーター)がない
セルモーターとは、エンジンを始動するため必要になる部品です。
エンジンを始動するとき、『トゥキュキュキュッ』という音がしますが、それがセルモーターが回っている音になります。
セルモーター内部にはブラシという消耗する部品が使用されているため、寿命がこれば交換が必要です。
ハイブリッド車の場合、駆動用モーター(ブラシは使っていない)を使用してエンジンの始動を行っているため、セルモーターが不要になりメリットとなります。
≪デメリット≫
補機バッテリーが高額
こちらでも説明をしていますが、ハイブリッドカーには専用の補機バッテリーを使用する必要があります。
しかし、その補機バッテリーの金額が高額なためデメリットになります。
バッテリーの金額に関する投稿はこちらです
ハイブリッド系統の故障のリスクがある
ハイブリッドを購入するにあたって一番心配なのがハイブリッド系統の故障です。
特に『インバーター付きコンバータ』や『ハイブリッドバッテリー』は数十万円と高額になります。
≪保証を有効利用するべし≫
ハイブリッドカーを購入するにあたって重要なことは、何年乗るのかです。
ハイブリッドカーを10年ほどのっているお客様のなかには、保証期間が過ぎてからハイブリッドバッテリー、インバーター付きコンバータの故障があり50万円以上実費で修理した方もいます。それだけでなく、エンジンもオイル消費をしているためその修理も必要になってきます。修理してから車の乗り換えを検討するのではなく、修理が必要になる前に乗り換えを検討する必要があります。
では実際何年がお勧めなのか?という話になります。
個人的な意見では7年以上乗るつもりであれば、ハイブリッドカー以外のものを検討することをお勧めします。
7年の理由は、保証が7年まで延長できるからです。
車は新車購入時にメーカー保証がついてきます。
メーカー保証には、3年又は6万キロまでの一般保証と、5年又は10万キロまでの特別保証があります。
保障内容を簡単に説明すると、
エンジン・ブレーキ・インバータ付きコンバータ・ハイブリッドバッテリーなど、『走る・曲がる・止まる』にかかわる部分は特別保証
それ以外のカーナビ・エアコン・パワーウィンドゥといったものは一般保証
となります。もちろん、内装や外装の汚れ・劣化、消耗品等は含まれないので注意してください。
これらの保証は、ディーラーにて車検を受けることで『保証がつくしプラン』というもので延長することが可能です。(保証に加入できない車両もあるためディーラーにて確認をおすすめします)
延長は初回車検(3年)と2回目の車検(5年)で行うことができ、最長で7年まで保証してもらうことができます。
『保証がつくしプラン』の加入には費用がかかりますが、7年までは車の故障を保証してもらうことができるので急な出費の心配がありません。また、保証がつくしプランの値上げが続いています。これはそれだけ保証を使っている人がいるということなのでぜひ加入することをおすすめします。