自動車の窓ガラスに貼っていいものは道路運送車両法の保安基準によって細かく定められています。しかし、この法令を読んだところで結局何のことを言っていて、何を貼っていいのか全然わからない・・・。という人がほとんどだと思います。私が自動車の専門学校に通っていた時は、内容を暗記しているだけで実際にどのようなものなのかを理解していませんでした。それではまったく意味がないと気付いたのは社会人になってからです。自動車整備士を目指す方は、暗記ではなくその内容を理解していなければならないと思います。少し話がそれてしまいましたが、今回はわかりにくい窓ガラスの法令についてわかりやすく解説しますので参考にしてください。
※説明するにあたって法令について記載していきますが、車に詳しくない方にも理解できるよう解説しています。投稿されている内容は法令の一部を紹介したものですべてではないため参考程度としてください。
この記事の目次
- 1 窓ガラスについて
- 2 窓ガラスの貼付物について
- 2.1 第29条第4項
- 2.1.1 1)整備命令標章
- 2.1.2 1)の2臨時検査合格標章
- 2.1.3 2)検査標章
- 2.1.4 2)の2 保安基準適合標章(中央点線のところから二つ折りとしたものに限る。)
- 2.1.5 3)自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第94号)第9条の2第1項(同法第9条の4において準用する場合を含む。)又は第10条の2第1項の保険標章、共済標章又は保険・共済除外標章
- 2.1.6 4)道路交通法第63条第4項の標章
- 2.1.7 5)削除
- 2.1.8 6)前各号に掲げるもののほか、運転者の視野の確保に支障がないものとして告示で定めるもの
- 2.1.9 7)前各号に掲げるもののほか、国土交通大臣又は地方運輸局長が指定したもの
- 2.1 第29条第4項
窓ガラスについて
第29条第3項
自動車(被牽引自動車を除く。)の前面ガラス及び側面ガラス(告示で定める部分を除く。)は、運転者の視野を妨げないものとして、ひずみ、可視光線の透過率等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない
第29条第3項の解説
前面ガラスとはフロントガラスのことをいい、車両前方のガラスのことをいいます。
側面ガラスとは、運転席側面の窓ガラス、助手席側面の窓ガラスのことをいいます。(後部座席側面の窓ガラスではない)
また、側面ガラスの『告示で定める部分を除く』とは、トヨタのスペイドやポルテの助手席窓ガラスのように、大きな窓ガラスは一部分が後方の窓ガラスとして判断されるという意味になります。
※詳細は『スペイド(ポルテ)の助手席窓ガラスって・・・。』で紹介しています
ひずみとは、フィルム等の貼り付けが不適切で歪(ゆが)んでみえてしまうことをいいます。
可視光線の透過率とは、ガラスがどれくらい光を通すかという値を%(パーセント)であらわしたもので、ガラスが透明であれば値は高くなり、暗くなれば値が低くなります。
前面ガラス、側面ガラスの透過率は70%以上でなければならないとなっていて、70%未満は保安基準不適合となり車検に通りません。
※法令で定める運転者の視野を妨げない部分であれば透過率が70%以上なくても保安基準に適合する場合があります
窓ガラスの貼付物について
第29条第4項
前項に規定する窓ガラスには、次に掲げるもの以外のものが装着され、貼り付けられ、 塗装され、又は刻印されていてはならない。
1)整備命令標章
不正改造車と書かれたステッカーになります。
地方運輸局長は、フルスモーク(フルスモ)やタイヤのはみ出しなどといった不正改造車に対して、保安基準に適合するように整備をすることを命じることができ、その不正改造車に貼り付けるステッカーが整備命令標章となります。貼り付けてもいいものというよりは張り付けられるものになります。
1)の2臨時検査合格標章
一定の範囲の自動車において事故が多発し構造等が保安基準に適合していない恐れがあると判断された場合、国土交通大臣が期間を定めて検査を受けなさいと発表することを臨時検査といいます。この臨時検査を受けて保安基準に適合すると認められると臨時検査適合標章が交付され、期間内はフロントガラスに貼り付けていなければならないものになります。
臨時検査は過去に行われたことがあるようですが、現在は行われていない検査になります。今は臨時検査とほぼ同じ意味合いとなる『リコール』が実施されているので、今後も臨時検査が行われることはないと思われます。
2)検査標章
自動車検査証(車検証)と一緒にもらえるステッカーで、自動車検査証の有効期間の満了する日が記載されています。
検査標章を貼り付けていない自動車に乗ることはできないので、保安基準適合標章が張り付けてあるなどの例外を除いて自動車のフロントガラスに必ず張り付けてあるものになります。
※詳細は第66条第1項を参考にしてください
2)の2 保安基準適合標章(中央点線のところから二つ折りとしたものに限る。)
ディーラーなどの指定整備工場で継続検査(車検)を受けたときに自動車検査証・検査標章の代わりとして交付されるものになります。
※詳細は第94条の5第11項を参考にしてください
3)自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第94号)第9条の2第1項(同法第9条の4において準用する場合を含む。)又は第10条の2第1項の保険標章、共済標章又は保険・共済除外標章
保険標章(共済標章)は、車検の必要がない検査対象外軽自動車(バイク)、原動機付自転車(原付)が自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入したときにもらえるステッカーです。現在は、バイクや原付のナンバープレートの左上部に貼られているステッカーが保険標章になります。
※フロントガラスに張られている保険標章はみたことがありません。昔は4輪の軽自動車も検査対象外自動車として車検を受ける必要がなかったため、その時にフロントガラスに貼っていたということだと考えられます。
4)道路交通法第63条第4項の標章
故障とかかれたステッカーになります。
第63条第4項の内容は『警察官は、第二項の規定による措置をとったときは、当該故障車両の運転者に対し、当該故障車両について整備を要する事項を記載した文書を交付し、かつ、当該故障車両の前面の見やすい箇所に標章をはりつけなければならない』となっています。
例えば、テールランプやブレーキランプの球切れなどは整備不良(故障車両)となるので故障ステッカーを張り付けられます。
※整備不良(故障車両)でなく、違法改造(不正改造車)と判断されれば整備命令標章が張り付けられることになります
5)削除
6)前各号に掲げるもののほか、運転者の視野の確保に支障がないものとして告示で定めるもの
※詳細は『窓ガラスに貼っていいもの(告示編)』で紹介しています
7)前各号に掲げるもののほか、国土交通大臣又は地方運輸局長が指定したもの
法定点検のステッカーなどがこれにあたります。