
エンジンを冷やすための水(冷却水又はLLC)がしっかり入っているのにオーバーヒートすることがあります。その一つの原因にラジエーターキャップの損傷によるものがあります。今回はラジエーターキャップに関する豆知識と簡易的な点検方法を紹介します。
この記事の目次
オーバーヒートとは
エンジンの冷却機能が正常に働かなくなったなどの理由により、エンジン本体が高温になってしまうことをいいます。エンジンが高温になりすぎると、エンジンの焼き付きやシリンダーヘッドガスケットが損傷してしまいます。
ラジエーターキャップとは
高温になった冷却水を冷やすラジエーターという部品のフタ(キャップ)のことを言います。冷却系統の修理等で冷却水が抜けたときは、ラジエーターキャップを外して補充することになります。
ラジエーターキャップの役割
≪部位の説明≫
≪最高圧力の制御≫
冷却水がエンジンの熱によって温められ膨張すると、ラジエーター内の圧力が上昇します。
ラジエーター内の圧力が上昇すると沸点も上昇する(約120℃)ため、冷却水は100℃になっても沸騰しなくなります。
しかし、ラジエーター内の圧力が上昇しすぎると冷却水の漏れや、冷却系統が損傷する危険があります。そのため、ラジエーターキャップの加圧弁(プレッシャバルブ)が規定圧力以上にならないよう制御しています。
ラジエーター内が規定圧力以上になった場合、ラジエーターキャップの加圧弁(プレッシャバルブ)が開き、余分な圧力をリザーバータンクに逃がすようになっています。
加圧弁(プレッシャバルブ)が開く圧力はラジエーターキャップ上部に記載されています。
この画像のラジエーターキャップの場合、加圧弁が開く圧力は108kPa(1.1kg/㎠)となります。
≪ラジエーター内が負圧にならないように制御≫
冷却水が冷えて収縮すると、ラジエーター内の圧力が低下します。
圧力が低下しラジエーター内が負圧になってしまうと、冷却系統が損傷する危険があります。そのため、ラジエーターキャップの負圧弁(バキュームバルブ)によりラジエーター内の圧力が負圧にならないよう制御しています。
ラジエーター内が負圧になった場合、負圧弁(バキュームバルブ)が開き、リザーバータンクから冷却水を吸い戻すことで圧力を調整しています。
≪ラジエーターのフタ≫
ラジエーターとラジエーターキャップ合わせ面から、冷却水が漏れないようにする密閉弁があります。
ラジエーターキャップが損傷すると・・・
ラジエーターキャップ損傷の例
こちらの画像は、点検で入庫していただいた時に損傷を発見したものです。
古いラジエーターキャップによくある負圧弁(バキュームバルブ)の損傷になります。
どうしてオーバーヒートする?
上記の例のように負圧弁が損傷してしまうと、負圧弁は常に開いている状態になります。
冷却水が熱で膨張しても負圧弁からリザーバータンクへと圧力が抜けてしまい加圧することができないため沸点をあげることができません。よって加圧できていれば120℃まで沸騰が抑えられたのが、100℃で沸騰することになりオーバーヒートしやすくなってしまいます。
また、ラジエータキャップの劣化により、加圧弁が正常に働かなくなり最高圧力が低くなっているケースもあります。この場合もラジエーター内の圧力が低くなり(沸点が低くなり)オーバーヒートしやすくなります。
冷却水が沸騰するとオーバーヒートしやすくなる理由
冷却水が沸騰してしまうと冷却水内部に気泡が発生します。気泡いわゆる空気は水よりも冷却効果が低いためオーバーヒートしやすくなります。
すぐにオーバーヒートしない理由
ここで知っておいていただきたいのが、ラジエーターキャップが損傷したからといってすぐにオーバーヒートするわけではありません。実際に、点検で入庫したお客様も通常通りに走行することができていたためラジエーターキャップの損傷には気が付いていませんでした。
すぐにオーバーヒートしない理由としては、冷却水の温度が80℃くらいになるように制御されているからです。
しかし、『高速道路の走行でエンジンの負荷が大きい』『下り坂でエンジンブレーキによりエンジンの高回転がつづく』『外気温が高い(夏)』などの状態では冷却が間に合わず冷却水の温度が100℃近くになることがあります。
いつもより長距離を走行する、遠出するときは特にラジエーターキャップの点検をするようにしましょう。
点検方法
ラジエーターキャップの点検は、車両から取り外して目視による点検と、ラジエーターキャップテスターで開弁圧を測定し良否判定をします。この方法で点検するのがベストですが、なかなかそこまでやるのは難しいので、今回は簡単にできる点検方法を紹介します。
その方法とは、ラジエーターのホースをつまむという方法です。
ラジエーターホースをつまんで点検
ホースに弾力があればラジエーターキャップの簡易点検は良好です。
ラジエーターキャップに大きな損傷がなく、加圧できる状態であると判断できます。
ラジエーターホースをつまんでもよくわからないという人はラジエーターキャップを外して違いを確認しましょう。
※画像はラジエーターキャップが取れた状態ですが点検するときは取り付けて行ってください
ホースに弾力がなければラジエーターキャップを取り外して点検します。
ラジエーターキャップの損傷を確認して、異常がなければラジエーター内に冷却水が入っているかどうかを点検します。ラジエーターホースをつまんでも冷却水があふれでない場合は冷却水がどこかで漏れている可能性があるので整備工場で点検してもらいましょう。
≪ラジエーターキャップを取り外す前に≫
熱いときは絶対に開けないでください。
熱いときはラジエーター内は圧力がかかっています。ラジエーターキャップが外れたと同時に冷却水があふれでます。
また、冷却水が100℃以上のときにラジエーターキャップを外してしまうと、圧力が抜けたとこで冷却水が沸騰し噴水のように冷却水が飛び散り大変危険です。
≪ラジエーターキャップの取り外し方≫
ラジエーターキャップを矢印の方向に回します。(左回転)
ただ回転させようとしてもツメがひっかかるので少し下へ押さえつけて回してください。
120度ほど回すとそれ以上回らなくなりラジエーターキャップが外せる状態になります。
ラジエーターキャップを上に持ち上げて取り外します。